任意整理のときに過払い金の有無がわかる、その計算法と調べ方とは?

計算法

かつては、出資法の上限金利(29.2%)での貸付がまかり通っていた時代がありました。この時期に借金をしていた人は、払いすぎた利息「過払い金」が見つかる可能性が高いです。過払い金は借金の元本の返済に充てられ、残債を上回れば手元に戻ってきます。過払い金返還請求の時効は10年なので、心当たりがある人は早急に調べることが大切です。

グレーゾーン金利が原因で過払い金が発生した

任意整理では、本格的な手続きを始める前に、まず現行の利息制限法に基づいた利息の引き直し計算を行います。借金をした時期によっては「過払い金」が発生していることが分かる場合があります。

借金の利息とはどのように決められているの?

過払い金とは何かを説明する前に、まず借金の利息は法律でどのように規定されているかについて見ていきましょう。

「利息制限法」で利息の上限を定める

お金の貸付を行うときの上限金利は、「利息制限法」で次のように規定されています。

利息制限法による上限金利規定
元本が10万円未満 年20%
元本が10万円以上100万円未満 年18%
元本が100万円以上 年15%

もしも貸金業者がこの金利を超える利息を請求してきても、超過部分の金利の契約は無効です。利息制限法の上限金利と次に説明する出資法の上限金利の間の金利で貸付を行うと貸金業法違反となり行政処分の対象となります。

刑罰の対象を定めた「出資法」

一方、借金の利息に関してもう一つ重要な法律があります。それが「出資法」です(正式名称は「出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律」)。貸金業者が年利20%を超える利息で契約を行った場合などは、出資法違反で刑事罰を受けることが定められているのです。

5年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金(法人は3000万円)、またはこれらが併科されます。また、貸金業者以外に対しては、年利109.5%を超える利息で契約した場合が刑事罰の対象となっており、これ以上の利息の契約は無効となります。

過払い金返還請求が始まった背景は?

過去には20%を超える高金利の貸付も

現在、真っ当な貸金業者が年利20%を超えた貸し付けを行うことはありません。しかし、過去には法律の抜け穴をついた高金利での貸付がまかり通っていた時期があり、債務者が利息を払いすぎていた時期がありました。これが「過払い金」と呼ばれるものです。

「グレーゾーン金利」の発生

かつて、出資法では金利の上限は29.2%と定められていました。上限金利を20%とする利息制限法がありながら、金利を29.2%以下にすれば事実上刑事罰を逃れることができたのです。背景には、債務者の自由意志支払っている金利であれば利息制限法の上限金利を超えて貸し付けを行ってもよいという、貸金業法の「みなし弁済」という制度の存在がありました(みなし弁済は現在廃止)。

このように、シロではないがクロでもない、法律の抜け穴をつく「グレーゾーン金利」によって、高金利の貸付が公然と行われていたのです。

多重債務が社会問題となり、法改正の動きが始まる

グレーゾーン金利によって借金地獄に陥る人が増え、多重債務は社会問題となりました。しかし、2006年に最高裁が「みなし弁済」を否定する判決を出します。この後グレーゾーン金利撤廃に向けて法改正が行われ、債務者が払いすぎた利息を取り返す「過払い金返還請求」が法律上認められるようになったのです。

任意整理で過払い金を発見したときの注意点とは

弁護士や司法書士などの専門家に任意整理を依頼すると、借金の時期から過払い金の存在が分かる場合があります。おおまかな目安ですが、2008年頃よりも前に貸金業者等から借金をしている人は、過払い金が発生している可能性が高いと言われています。

任意整理で過払い金の有無がわかる

裁判所を介さない任意整理では、貸金業者に直接取引履歴の開示請求を行って残債を把握し、さらに利息制限法に基づき利息の引き直し計算を行って、残債の正確な金額を割り出します。

利息制限法に基づく利息の引き直し計算

利息制限法に基づく引き直し計算をすれば、上限金利を超過している分の利息を元本の返済に充てることができます。実際の計算は、履歴の古い順に1件ずつ、適正な利息をもとに過払い分の金額・元本の残りを求めていきます。計算を繰り返し、最後に「実際に支払った額」と「正しい利息で計算した額」を比べると、過払い金の金額がわかるのです。

最近はインターネット上で計算ソフトなども配布されていますが、法律をよく知らない人が自力で行うのは大変なので、専門家に依頼したほうが確実です。

過払い金発生の可能性が高くなる時期は「2008年」が分岐点

利息の引き直し計算の結果、手続きの上では残債より過払い金の法が多ければ過払い金返還請求へ、そうでなければ通常の任意整理へと進みます。一般的に過払い金が発生する可能性が高いのは、2008年頃より前に消費者金融などの貸金業者と5年以上の取引がある場合です。7年以上借金をしている場合は特に可能性が大きいと言えます。また、信販会社の融資やリボ払い等でも過払い金が発生している場合があるので、丁寧に調べてみてはいかがでしょうか。

過払い金にも利息がある

意外かもしれませんが、借金に利息があるように、過払い金につても利息が存在します。過払い金の利息は、引き直し計算を行い過払い金が発覚した時点から起算され、利率は年利5%ですので、忘れないように請求しましょう。弁護士などの専門家に手続きを依頼すれば、抜かりなく請求してくれます。

任意整理や過払い金返還請求をするときの注意点

過払い金返還請求にもデメリットがある!?

グレーゾーン金利がまかり通っていた時代に借金をしていた心当たりがあれば、任意整理の際に利息の引き直し計算をして過払い金の有無をまず調べてみましょう。しかし、任意整理や過払い金返還請求をする際には、注意しておきたい点があります。

過払い金がなければ「ブラックリスト」に載ってしまう

利息の引き直し計算を行った結果過払い金が発生する場合、過払い金が残債を上回る金額で手元にお金が返ってきた場合は、信用情報機関に事故情報が登録されることはありません。しかし、過払い金の返還請求をしても借金の完済に至らず、残債が1円でも残った場合は、通常の任意整理と同様に事故情報が5年間登録されることになります。いわゆる「ブラックリスト」に載る状態になるのです。

過払い金返還請求には時効があるので注意

グレーゾーン金利の借金は完済し、現在別の借金について任意整理を検討している方は、完済した借金に過払い金が発生しているかもしれません。過払い金返還請求の権利は、時効により完済してから10年で消滅してしまいます。もし、思い返してみて過払い金の疑いがあれば、今すぐにでも弁護士や司法書士に相談するようにすることが大切です。

最近は利息の引き直し計算のみであれば無料で行ってくれる弁護士事務所等も増えています。過払い金があるかどうか心配な方は気軽に弁護士などの専門家に相談してみてくださいね。

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