特定調停は、従来の民事調停の問題点を解決するための制度

特定調停と民事調停はこう違う

特定調停法は、債務者の負担軽減と実効性を高めるために制定された民事調停法の特則です。基本部分は従来の民事調停と同じですが、これまで問題視されてきた難点が修正されました。おもな3つの修正点は、民事執行停止要件が緩和されたこと、専門性を持つ調停委員を指定できること、書類不提出の債権者に罰則が設けられたことです。

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特定調停は民事調停の一種

特定調停は裁判所に申し立てを行いますが、手続きが比較的簡単で、弁済方法など厳密な規定がありません。あくまでも債務者と債権者の話し合いで解決する「調停」という形をとっているからです。ただし、これまでの民事調停とは相違点があります。

多重債務整理に特化した民事調停制度

特定調停法が出来る前は、民事調停で多重債務問題の解決を図ってきました。しかし民事調停ではいろいろやりにくい点が多かったため、改善策として民事調停の特例として設けられたのが特定調停の制度です。

そもそも民事調停って?

一般的には、「民事調停」よりも「民事訴訟」のほうが耳にすることが多いかもしれません。民事訴訟はどちらが正しいかを裁判所で争い決着をつけますが、民事調停では調停員主導の中、申立人と相手方との双方の話し合いにより円満な和解を目指します。債務整理に限らず、交通事故の損害賠償請求や近隣トラブルなど、身近な揉め事に幅広く利用されています。

目的は債務者の経済的再生

双方の歩み寄りにより円満な解決を図る民事調停ですが、多重債務のトラブルについては運用がうまくいかないことが難点でした。そこで、「支払不能に陥るおそれのある債務者の経済的再生に資するため、特定債務者が負っている金銭債務に係る利害関係の調整を促進する」ことを目的に、民事調停法の特例としての特定調停法が制定されたのです。

特定調停も、基本は債務弁済協定調停と同じ

特定調停法は民事調停法の特則として、特定債務者の負担のさらなる軽減と特定調停の実効性を高めるために制定されました。そのため、基本的には従来の民事調停法に則った「債務弁済協定調停」に基づいて運用されています。

利息の引き直し計算で真の借金額を割り出して分割で支払う

債務弁済協定調停とは、弁済方法について債権者と債務者とが合意する調停制度です。この制度では、現行の利息制限法の上限金利に基づいて利息の引き直し計算を行って減額された借金を3年間(延長される場合もある)で支払うことになっていました。特定調停でも、弁済額や弁済期間についてはこのやり方が引き継がれています。

特定調停は任意整理に類似した制度

簡易裁判所を介して手続きを行う点は異なりますが、利息制限法に基づく利息の引き直し計算を利用するなど、債務整理手続きの中では任意整理に最も近いと言われています。また、住宅や車のローンを手続きから除外できる点でも任意整理に似ています。

従来の民事調停から特定調停で修正された項目

債務弁済協定調停は、調停委員(裁判所が選任する弁護士)が債権者と債務者との仲裁を行ってくれます。弁護士にすべてを依頼する民事再生より費用が抑えられますが、これまでいくつかの難点が問題視されていました。

従来の債務弁済協定調停の難点とは何だったのか

債務弁済協定調停では、裁判所に自己破産や個人再生ほどの強制力がなく、実効性に欠ける点がありました。また、各裁判所や調停委員による現場の運用がまちまちになることも問題でした。ここでは、主な3つの問題点について説明します。

民事執行の停止要件が厳しい

計画通りの債務履行が行われなかった場合、債権者が民事執行(債務者の財産を差し押さえて債権者に分配するなどの手続き)をする事態もありえます。債務弁済協定調停では、裁判所が民事執行手続の停止を命じることができるのは、「特定調停の成立を不能、若しくは著しく困難にするおそれのある時」に限られていました。さらに、「担保の提出が必要」「裁判所が作成した債務名義に基づく強制執行は執行停止の対象にならない」という要件も、債務者にとって厳しいものでした。

調停委員の専門性に差があった

債務弁済協定調停では、当該事案が専門分野でない人も調停委員に選任される場合がありました。専門知識や経験が豊富な調停委員に当たればよいですが、そうでない調停委員に当たってしまうと、債務者が期待するような結果にならないこともあります。調停委員の知識や経験の差は、債務者が不公平と感じる原因にもなっていました。

債権者から書類を提出させることが困難だった

債務弁済協定調停では、債権者である貸金業者から債権内容などの関係書類を提出させるのが困難でした。たとえ提出しなかったとしても特に罰則はなく、書類の提出が債権者の義務ではなかったからです。

特定調停で改善された点

特定調停では、これまで調停の円滑な成立を妨げていた債務弁済協定調停の難点を打開するための方法が打ち出されました。

民事執行停止要件が緩和

特定調停では、裁判所が民事執行手続の停止を命じることができる要件に「特定調停の円滑な進行を妨げるおそれがある時」という文言を追加しました。さらに「無担保での停止も可能」になり、「裁判所が作成した債務名義に基づく強制執行も執行停止の対象」とされました。

専門性を持つ調停委員を指定できるように

特定調停では、事案ごとに法律や金融・資産評価などの分野に関する専門知識や経験を持つ調停委員を指定することができるようになりました。

書類不提出の債権者に罰則を設けた

特定調停では、債権者・債務者双方が負うべき責務を明記し、裁判所からの関係書類や物件の提出に応じなければ「10万円以下の過料」に処すという罰則が設定されています。これにより、債権者である貸金業者等に書類の提出を促すことができるようになりました。

債務整理手続に迷ったら弁護士に相談を

ほかにも、債務弁済協定調停と特定調停でさまざまな違いがあります。特定調停は債務者本人だけで手続きすることができますが、違いについてより詳しく知りたい場合やほかの債務整理手続きと迷っている場合には、弁護士など専門家に相談することをおすすめします。

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