自己破産における少額管財事件とはどういったものなのか、少額管財事件の特徴を交えて解説します。また、少額管財事件はすべての裁判所で利用できるわけではありません。
その理由と、手続きを利用するための条件についても解説し、少額管財事件について申立人の立場において必要となる知識を満遍なく得られる内容となっています。

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自己破産における少額管財事件とは?
今回は、自己破産における少額管財事件についてご説明します。
自己破産という手続きは、裁判所に申立をし、裁判所の判断によって2つの事件処理に分けられることになっています。それが「同時廃止事件」と「管財事件」です。そして、この管財事件の中でもいくつかの条件が当てはまった場合に少額負担で手続きを進めることができるのが「少額管財事件」というわけです。
しかし、この少額管財事件というのはすべての裁判所で実施されているわけではありません。自身の申し立てる裁判所に少額管財の制度があるのかないのかについては、その地域で活躍する弁護士に直接相談してみることをおすすめします。
というわけで今回は、少額管財の制度がある裁判所への申立を前提にご説明していきます。
少額管財事件の特徴
少額管財事件の特徴は、上記ですでに触れてはいますが、費用負担が少額で済むという特徴があります。そもそも管財事件というのは、裁判所から選ばれた破産管財人が破産者の財産調査や管理、そして債権者に現金を分配するために運用されている制度の1つです。
職印の数に限りのある裁判所ではなく、処理の専門家(多くはその地域で活躍する弁護士)に任せることで、手続きをより迅速に進めるためといった意図もあります。そして選任された破産管財人に対しては、申立人が保有している資産の中から管財人費用を支払わなければなりません。この費用が少額で済むのが少額管財事件の特徴というわけです。裁判所により運用の違いはありますが、おおよそ20万円程度となっています。
本来は同時廃止で処理されたほうが・・・
上記のように、少額管財事件は負担する金額が20万円程度となっているため、個人事業主の方などが、より自己破産を利用しやすくなるという配慮がなされています。しかし、本来は同時廃止で処理されたほうが金銭的負担は少なくすみます。同時廃止であれば、自己破産手続きにかかる費用は2万円程度で済むのです。
もし、少額管財事件として処理が決定した場合、裁判所から指定された管財費用(予納金とも言います)を納めることができないでいると、手続きを進めることができなくなってしまうのです。場合によっては数か月間費用の積み立てが必要になるケースもあり、同時廃止と比較すると、どうしても費用面の負担も大きくなってしまうため注意が必要です。
破産管財人が必要と判断される基準
では、どういった場合に同時廃止ではなく、破産管財人が必要とされるのでしょうか?
まず、同時廃止事件というのは、破産手続きを行う必要がない場合に処理されます。この破産手続きというのが、先ほど簡単にご説明した破産管財人の業務というわけです。
その他にも、免責不許可事由(免責を不許可するに十分な事由があること)がある場合などに、本当にこの人に免責決定を出して良いのか?といった調査のため、破産管財人が選任されることもあります。つまり、破産手続きを行う必要がない場合、もっとわかりやすく言えば、収支状況における調査が必要になる理由がない場合や、債権者へ支払うだけの資産を有していない場合は、同時廃止事件として処理されるというわけです。
よって、中には管財事件を回避できない方がいらっしゃるのも事実です。そんな場合に、少額管財の制度が利用できると、負担を軽減できるといった具合になります。
なぜ少額管財を実施していない裁判所があるの?
上記のことからも、費用的な負担がもっとも少ないのが同時廃止事件、その次が少額管財事件、最後に管財事件ということになります。同時廃止事件として処理されない事情がある方にとっては、少額管財にて処理されたいと考えるのはおかしなことではありません。
しかし、すべての裁判所が少額管財という制度を実施しているわけではないのです。
では、なぜ少額管財を実施していない裁判所があるのでしょうか?
少額管財を実施していない裁判所がある理由
実は自己破産という手続きは、「破産法」という法律に則って実施されています。しかし、この破産法の中に少額管財という制度については記載されていないのです。
少額管財というのは、各裁判所が独自に行っている運用方針の1つであって、原則的に実施されていなければならないというものではありません。こうした理由から、裁判所によっては、少額管財という制度を運用していない場合もあるというわけです。
少額管財は都市圏ほど実施される傾向
なお、少額管財事件は予納金を少額に押さえられていることからも、比較的、難解でない破産手続きの場合によく実施されています。大きな保有資産のある企業破産の場合などは、財産管理や処分に膨大な時間がかかるケースも多く、破産管財人に支払う費用(言い換えれば破産管財人への報酬)は高額にならざるを得ません。
一方で、同時廃止とまではいかないまでも、簡易な破産手続きが必要になるケースであれば、管財費用を低額に抑えつつ、破産管財人に対しても迅速な処理にて破産手続きを終結させてもらいたいという裁判所側の思惑があります。特に、都市圏の裁判所は処理する事件数自体が多く、迅速処理が期待される少額管財制度を運用している傾向があります。
東京地方裁判所でも少額管財事件を運用しています。
少額管財制度を利用するには?
上記のように、裁判所によって運用の違いはあるものの、管財事件として処理されるよりも少額管財事件として処理されたほうが申立人にとっての負担は少なく済みます。
しかし、少額管財事件というのは、利用するために重要な条件が1つあるのです。
それが、自己破産の申立代理人に弁護士を選任させていなければならないという点。
自己破産申し立てにおける弁護士の役割
自己破産という手続きは、申立の際に資産状況や毎月の収支について申立書にまとめなければなりません。この記載が曖昧でああったり、不明瞭な点が多かったりする場合、裁判所から再調査をお願いされるばかりか、破産管財人が選任され、あらためて調査を行ってもらうといった事態になります。となれば、破産管財人の負担は大きくなるため、少額管財ではなく管財事件として処理されてしまいます。
しかし、弁護士が自己破産の代理人についている場合、申し立てに際しての必要最低限の調査はなされているのが当然です。もちろん必要に応じて裁判所から指摘が入りますが、弁護士が就いている以上、必要最低限の調査はクリアされているのが当たり前です。それが弁護士の役割でもあります。
少額管財事件は弁護士に依頼を
上記のように、弁護士が就くことによって必要最低限の調査がなされているとなれば、破産管財人の負担も少なくなりますし、手続きをより迅速に進めていけることになります。少額管財事件では、申立に際して必要最低限の調査がなされている前提でさらなる処理の迅速化を図っているため、弁護士が自己破産の代理人についていなければならない、といった条件があるのです。弁護士が就いていない場合(司法書士に依頼した場合も含む)、まず間違いなく少額管財事件として処理される可能性がなくなってしまうため、少しでも負担を軽減させたい場合は、弁護士に依頼するようにしてください。
少額管財が運用されてない裁判所でもメリットあり
なお、少額管財事件が運用されていない裁判所であっても、弁護士が就いているというだけで破産管財人の調査が省けることからも、管財費用が比較的抑えられる傾向があります。
そういった意味でも、自己破産は弁護士に依頼すべきと言えるでしょう。
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