自己破産で車を手元に残しておく方法はある?生活に必須であれば可能性あり

車とお金

自己破産すると車は必ず処分される?

車も原則は換価処分

自己破産をすると、原則として車も換価処分されます。しかし一定の条件を満たせば、車を手元に残すこともできます。

たとえば、東京地方裁判所の場合、「評価額20万円以下の車」であれば、例外的に自由財産として手元に残すことを認めています。

評価額20万円以下の車なら残せる可能性

自由財産とは、破産財団に組み込まれず、破産者が自由に使える財産のことです。自己破産後の生活に必要な最低限の生活費(99万円以下の現金、20万円以下の預貯金など)や、生活必需品・仕事に欠かせない道具などが、これに該当します(破産法第34条3項)。

自己破産は破産者を救済して再スタートを後押しするための制度ですから、生活に必要な最低限の財産は残せるようにしているのです。

車は原則として破産法上に定められる自由財産には含まれていませんが、裁判所によっては評価額の低い車に限り、例外的に自由財産として認める基準を設定しています。このように自由財産の範囲を広げる裁判所独自の基準のことを、「換価基準(自由財産拡張基準)」と呼んでいます。

軽自動車は4年、普通車は6年が評価額ゼロになる目安

車の評価額については、あらかじめ買取業者に査定してもらうのが確実です。
ただし東京地方裁判所の場合、法定耐用年数(軽自動車が4年、普通乗用車が6年)を経過していれば、査定をしなくても評価額ゼロ円として申告しても良いことになっています。

車を残せるかは、各裁判所の設ける換価基準の確認を

東京地方裁判所以外の全国の裁判所でも同様の基準を設けていることが多いですが、各裁判所によって微妙に異なることもありますので、よく確認してください。

自己破産での車の処分はローンの状況で変わる

ローン返済中の車の所有権はローン会社にある

ローンが残っている状態で自己破産すると、車はローン会社に引き上げられてしまう可能性があります。
引き上げられた車は、通常売却されてローン残額の返済に充てられます。

なぜなら、ローンを返済し終わるまでの間、車の所有権がローン会社に留保されているからです。ローンを完済するまでは、自分名義の車であっても、完全に自分の物という訳ではないのです。

たとえ評価額が低い車でも、ローンが残っている場合は、手元に残すことは難しいかもしれません。

車のローンだけを払い続けることは、破産法上許されない

自己破産の手続きが開始すると、一部の債権者だけを依怙贔屓して支払うことは破産法上許されません。(破産法第252条1項3号:不当な偏頗行為の禁止)
そのため、自己破産後も車を手元に残したいからといって自動車ローンのみを支払うことはできません。

ローンが残っている車を手元に残すために考えられる対策は、次章で紹介します。

自己破産しても車を残す方法は?

家族などの第三者が破産者の代わりにローンを支払う

先ほど説明した通り、ローンが残っている車の所有権はローン会社に留保されていますので、自己破産が開始すると車が引き上げられてしまうのが原則です。

何としてでも残したい場合は、家族などの第三者に協力をお願いして、代わりローンを支払ってもらうという方法が考えられます。

もっともこの方法をとる場合には、債権者(ローン会社)の合意も必要となります。
さらに、ローンの残っている車の評価額が20万円以下であることも、条件となります。

評価額が20万円を超えている場合には換価処分されてしまう可能性があるので、併せて以下で紹介する「自由財産拡張の申立て」も行う必要があると考えられます。

車の評価額が20万円を超える場合は「自由財産拡張の申立て」を

前述の通り、自己破産は破産者が再スタートを切るのを応援する制度ですから、生活に必要な最低限の財産を「自由財産」として残すことにしています。
自由財産の範囲は破産法第34条に明記されていますが、同上4項において裁判所が独自の換価基準を設けて自由財産の範囲を拡張できるとしています。
東京地方裁判所の換価基準(自由財産の範囲を拡張する各裁判所独自の基準)においては、20万円以下の車は自由財産に含まれるとしています。

車の評価が20万円を超える場合であっても、裁判所に「自由財産の拡張の申立て」 (破産法34条4項)をすれば、その車を特別に「生活に欠かせない財産」として認めてもらえる可能性もあります。

20万円越えの車でも「生活に不可欠」と認められれば手元に残せる可能性も

たとえば、電車やバスがほとんど通っていない地域に生活している人にとっては、車が生活必需品になるでしょう。
加齢や障がいなど健康上の理由から、車でしか移動できないという事情も考えられます。
このように、破産者によって生活の状況は異なりますから、生活必需品の判断についても柔軟な対応が必要になることがあります。

たとえ車の評価額が20万円を超えている場合であっても、「どうしても生活に不可欠である」ということを証明できれば、裁判所に特別に自由財産として認めてもらえるかもしれません。ただし自由財産拡張の基準はかなり厳しいものとなっています。

「自由財産拡張の申立て」はまず破産管財人に相談を

「自由財産拡張の申立書」を裁判所に提出して行います(破産規則21条)。
自己判断で申立書をいきなり提出する前に、まずは破産管財人に相談してから行うようにしましょう。

「自由財産拡張の申立て」の期限は破産手続開始決定の確定から1ヶ月

「自由財産拡張の申立て」の期限は、破産手続開始決定が確定してから1ヶ月間となっています。
しかし1ヶ月経過すれば絶対に申立てができなくなるという訳ではありません。

自由財産拡張の申立てがなされると、裁判所は破産管財人の意見を聴かなければならないと定められています(破産法34条5項)。

1カ月という期間は裁判所の裁量によって延ばすことも可能ですので、万が一期限を過ぎってしまってもすぐに諦める必要はありません。
自由財産拡張に限らず、自己破産手続きについて、基本的に困ったこと分からないことがあれば、破産管財人に早めに打ち明けるようにしましょう。

自己破産前、車を残すためにやってはいけないこと

何としても車を残したいと思うあまり、破産法上で禁止されている行為を行ってしまう人もいます。
しかしそのような行為を行うと、免責不許可事由に該当すると判断され、自己破産でもっとも重要な免責(ほぼ全ての債務をなくしてもらえる)が受けられなくなるおそれがあります。

自己破産直前に車の名義を他人に変更する

たとえば、自己破産を申立てる直前に車を他人名義に変更する行為が代表例です。
自己破産直前での車の名義変更は、破産法第252条第1項第1号に定められている「不当な破産財団価値減少行為」に該当する可能性があります。

具体的には、「債権者を害する目的で,破産財団に属し,又は属すべき財産の隠匿,損壊,債権者に不利益な処分その他の破産財団の価値を不当に減少させる行為」を指しています。自己破産による車の換価処分を逃れる目的で他人名義に変更する行為は、「属すべき財産の隠匿」と考えられるからです。

車を他人名義にして財産から外したところで、自己破産手続きそのものがダメになってしまうようでは元も子もありません。絶対にやめましょう。

車のローンだけを優先して支払い続ける

車を手元に残すために、自己破産しても車のローンだけは支払い続けたいと考える人もいます。
しかし一部の債権者にだけ優先的に弁済する行為も、破産法上の免責不許可事由に該当するおそれがあります。

破産法第252条第1項第3号では、「特定の債権者に対する債務について,当該債権者に特別の利益を与える目的又は他の債権者を害する目的で,担保の供与又は債務の消滅に関する行為」として「不当な偏頗(へんぱ)行為」の禁止を明記しています。

債権者が複数いる場合は、平等に扱わなければならないのが、法律上のルールです。他の借金の免責を図る一方で、車だけ特別扱いすることは認められません。
どうしても車を残したい場合は、前述のように、家族に協力してもらいローンを代わりに返済してもらう方法を検討しましょう。

自己破産しても車を残したい場合は弁護士に相談を

自己破産をすると、原則として車も換価処分されます。
ローンが残っている場合、ローン完済までの間は所有権がローン会社に留保されていますので、自己破産開始後は車が引き上げられてしまうでしょう。ただし家族に協力してもらい、ローンを代わりに返済してもらえば車を残せる可能性もあります。

ローンがない場合、各裁判所の換価基準によっては「20万円以下の車」であれば自由財産(破産者が自由に使える財産)として手元に残せる可能性があります。
20万円を超えている場合でも、破産管財人に相談した上で別途「自由財産拡張の申立て」をして生活に不可欠であることを証明すれば、例外的に自由財産として認めてもらえるかもしれません。

状況によっては、自己破産以外の債務整理方法で車が残せることも

また、借金や収入の状況によっては、自己破産以外の、車を残しながらの債務整理が行える可能性もあります。

自己破産など債務整理を図りながら、どうしても車を残したい場合は、まずは弁護士に相談しましょう。

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