過払い金返還請求は自分でできる?専門家へ頼むよりお得?個人で請求する方法と流れ

過払い請求は個人でもできる!?

過払い金返還請求は借金を持つ個人が自分で行うことも可能です。
ただし、平日裁判所に行けない人や全額返還にこだわる人には向きません。

自分で請求すれば専門家へ払う依頼費用は節約できますが、時間と手間がかかる上に、弁護士など専門家に任せた場合に比べて返還額が減額される可能性も高まります。

そのため、過払い金返還請求を自分でやることでの弁護士費用の節約が、本当に得なのか、見極めることが重要です。

過払い金請求を自分でする方法と流れ

過払い金返還請求を自分でする場合の手続きは以下の流れとなります。

  1. 取引履歴の取得
  2. 過払い金額の引き直し計算
  3. 過払い金返還請求書の作成・送付
  4. 貸金業者との返還交渉
  5. 交渉が決裂した場合:裁判所への提訴(過払い金返還請求訴訟)
  6. 過払い金の返還

取引履歴の取得

過払い金請求を行う貸金業者に電話やFAX、郵送などで取引履歴を送ってもらうように依頼します。
取引履歴を取り寄せるには、以下のものを貸金業者に提出します。

  • 取引履歴開示請求書
  • 本人確認書類(運転免許証・パスポートの写しなど)

取引履歴は無料で取得できる場合が多いですが、貸金業者によっては有料の場合もあります。
取引履歴が届くまでに数週間かかる場合があります。

個人からの取引履歴開示は、弁護士や司法書士など専門家からの請求に比べ後回しにされるケースもあると言われています。
過払い金返還請求の時効が近い場合は専門家に依頼することをおすすめします。

過払い金額の引き直し計算

貸金業者から届いた取引履歴をもとに、自分で過払い金額を計算します。
過払い金の引き直し計算には、インターネット上で公開されている過払い金計算ツールや利息計算ソフトとして配布されているExcelファイルなどを利用すると便利です。

ここで準備するのは「利息制限法の上限金利を越えて支払った利息」の正確な数字です。

貸し付け金額

利息制限法の上限金利 過払い金の対象となる利率 出資法の上限金利
10万円未満 年20% 利息制限法の上限金利を越えて
支払った利息
年29.2%
10万円~100万円 年18%
100万円以上 年15%

ネット上の過払い金計算ツールの中には、概算・目安を算出するだけのものも多くあります。
ツール任せで算出できるものではないため、届いた取引履歴を確認の上、細心の注意を払って計算するようにしてください。

引き直し計算の間違いは過払い金請求失敗に直結

間違った金額で請求してしまうと、返還請求の失敗に直結します。
たとえば、計算間違いから過払い金の額を過少申告してしまえば、本来戻ってくるはずのお金よりも戻ってくる金額は少なくなります。
当然ですが、貸金業者側でわざわざ正確な返還額を再計算し、指摘してくれるようなことはありません。
最悪は、計算不備を理由に返還請求自体を拒否されるおそれもあります。

過払い金返還請求書の作成・送付

引き直し計算を行い、過払い金の金額が確定したら、過払い金返還請求書を作成します。

過払い金返還請求書には、以下のような内容を記入します。

  • 請求日時
  • 貸金業者名
  • 貸金業者の代表者名
  • 自分の氏名
  • 住所
  • 電話番号
  • 振込口座名・口座番号
  • 契約番号・会員番号など
  • 計算した過払い金の金額

過払い金返還請求書を作成したら、過払い金の計算内容をまとめた「引き直し計算書」とセットで、内容証明郵便で貸金業者に送付します。
これらの書類を内容証明郵便で送ることで「債務者から貸金業者に対して、確かに過払い金返還請求書を送付した」事実を証明する証拠となります。

貸金業者との返還交渉

貸金業者から返答があるまで待ちます。
貸金業者から返還に応じる旨の連絡があれば、その後の手続きを進めます。
直接の返還交渉で、返還金額・方法・期限などを明確に確認しましょう。

なお、正確な計算を行っていた場合でも、貸金業者がそのまま請求金額全額の返還に承諾してくれるケースは稀です。
ましてや弁護士等ではない個人からの請求では、なにかしらの理由をつけて金額を少なくしてくるおそれも高いです。
貸金業者からの提案内容をそのまま鵜呑みにせず、引き直し計算を行った内容とつけあわせ正しい内容となっているか精査が必要です。

交渉が決裂した場合:裁判所への提訴(過払い金返還請求訴訟)

貸金業者から返還拒否や無視などの対応があれば、裁判所へ提訴することも検討することになります。

過払い金の返還

返還交渉での交渉成立、あるいは過払い金返還請求訴訟の判決が確定すると、指定口座に双方で妥結した金額の過払い金が入金されます。

過払い金請求を自分(個人)でするより専門家に依頼した方が良いケース

過払い金請求を弁護士や司法書士に依頼しないで自分で行うことは可能です。
ただし、いくら取り戻したいのか、最後まで自分だけでできるのか等を考えて慎重に判断する必要があります。

また、その人の仕事や立場によっては、個人での過払い金請返還請求手続きが向いていない人もいます。

次の項目に当てはまる人は、はじめから専門家に依頼するのが望ましいでしょう。

平日に裁判所に行けない人

交渉をしても貸金業者が返還に応じなかったり、到底納得できない金額での和解を求めてきた場合は、裁判所に過払い金返還訴訟を提起します。
訴訟になれば平日に幾度も裁判所に足を運ばなければならなくなり時間がかかってしまいます。仕事を休みにくい立場にあるなど、事情がある人は難しいでしょう。

過払い金の満額返還にこだわる人

貸金業者側は、少しでも少ない返還額で和解しようとします。
個人で請求すると、法律のプロである弁護士がついていないことで貸金業者に足元を見られてしまい、交渉が相手のペースで進んでしまうリスクがあります。

つまり専門家に依頼するよりも返還額が減額されやすい可能性があるのです。どうしても満額返還にこだわるのなら、過払い金返還訴訟は避けられません。
以上のことを踏まえると、個人で貸金業者と対応するのは難しくなります。

家族に知られると困る人

過払い金返還請求では、貸金業者との電話や郵便物でのやりとりが必要です。

訴訟になれば、さらに裁判所とのやりとりや出廷も必要になるため、いずれ家族には知られてしまうでしょう。
家族に内緒で借金をしていたなど知られなくない事情がある人は、専門家にすべて依頼してしまうのが得策です。

過払い金請求を自分(個人)で行う利点は?

過払い金返還請求を自分で行った場合の利点はただひとつ、費用の節約です。
過払い金返還請求を弁護士や司法書士など専門家に依頼する場合、報酬金や着手金などの費用は決して少額ではありません。
手元に残る金額はどうしても少なくなってしまいます。

しかし、逆に言えば、コスト以外の利点はあまりないとも言えます。

弁護士や司法書士に払う依頼費用がいらない

費用の節約が、具体的にいくらになるのか見ていきましょう。
依頼費用に関しては、弁護士と司法書士どちらも大きな差はありません。

費用には主に次の4つの項目があり、請求する貸金業者の数が多いほど費用は高額になります。
自分で返還請求すれば、これらの費用はかかりません。

過払い金請求の依頼費用
①着手金 業者1社ごとに1万~3万円。0円の事務所もある。
②成功報酬 返還に成功した業者1社ごとに2万円程度。
③過払い報酬 返還された過払い金の20%。訴訟になった場合は25%。
④別途事務手数料 各事務所に確認が必要。

あくまでも目安ですので、専門家に正式に依頼する前に最終的な費用を示してもらうことが大切です。

自分(個人)でする過払い金請求の課題

では、自分で手続きをする場合の課題にはどんなものがあるでしょうか。

時間と手間がかかる

過払い金請求に慣れている人はいないでしょうし、手続きにはそれだけ時間と手間がかかります。中でも請求の過程で多くの人を悩ませるのが、引き直し計算と書類の準備です。

引き直し計算が難しい

過払い金請求で必ず必要なのが「引き直し計算」です。
引き直し計算とは、実際に支払った利息を利息制限法の上限金利に則って計算し、過払い金を算出することです。

債権者が1社の場合は何とかなるかもしれませんが、取引業者の数が多かったり、取引期間が長期間にわたればそれだけ作業量も膨大になります。
また、頻繁に借り換えを繰り返していたなど取引内容が複雑な場合も、本人ではかなり難しい作業になります。

用意する書類が多い

過払い金返還請求を自分でやるからには、必要書類をすべて自分で作成・用意しなくてはなりません。

訴訟になれば裁判所に提出する書類が必要なので、法的な知識が乏しい個人ではかなりの時間と手間がかかってしまいます。
必要書類は以下の通りです。

過払い金請求や訴訟、返還までに必要な書類
  • 過払い金返還請求書
  • 訴状
  • 証拠説明書
  • 取引履歴
  • 引き直し計算書
  • 登記簿謄本
  • 訴状費用額確定処分申立書

過払い金の返還額が減らされる可能性が高い

専門家でない個人にとって、最大の難関となるのは相手との交渉の部分です。
いくらうまく交渉しようとしても、こちらからの請求額に応じる貸金業者は稀なので、それなりの覚悟が必要です。

個人が請求通りの過払い金を回収するのは難しい

忘れてはいけないのは、これから交渉する相手は「お金のプロ」だということです。

貸金業者は債務整理の法的知識や法的運用事例、裁判例にも精通しています。個人が過払い金返還請求交渉を行おうとしても、やはり知識や経験値では貸金業者には敵いません。
交渉がうまくいかずに相手のペースに誘導され、満額には程遠い返還額で和解させられるケースも少なくありません。

交渉が苦手な人は精神的に疲れる

過払い金返還請求権は法律で認められた権利ですから、貸金業者に遠慮はいりません。強気で満額を請求しましょう。

ただし相手も仕事ですから、なんとか返還額を減らそうと巧みに交渉してくる場合は否定できません。
交渉や駆け引きに慣れていない人や苦手な人にとっては、精神的な苦痛や疲労を感じるかもしれません。

自分での過払い金返還請求は時間・手間と効果に疑問

過払い金返還請求を自分で行うと、専門家に依頼するよりも大幅に時間と手間がかかります。さらに希望通りの額を回収するのは簡単なことではありません。

まとめ

過払い金返還請求は自分で行うことで専門家へ支払う費用はたしかに節約できます。
しかし、請求者が個人であることをいいことに、債権者側も高圧的な対応や、過払い金の返還額が想像に反して減額されるおそれもあります。

過払い金請求は自分個人でするより弁護士事務所の無料相談がおすすめ

過払い金返還請求を最もスムーズに、かつ効果的に実行したいなら、弁護士や司法書士など債務整理の専門家に相談するのがベストです。

頑張って自分でやってみたものの、結局、「最初から弁護士に依頼費用を払って任せた方が得だった!」という事態にならないためにも、まずは弁護士事務所などで行っている無料相談を利用してみることをおすすめします。

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