過払い金返還請求をすると住宅ローンに何か影響はある?

住宅ローンと過払い請求の関係

過払い金返還請求は、法律で認められた正当な行為です。借金の完済後に請求したり、過払い金が残債と完全に相殺できる場合は住宅ローンへの影響はありませんが、返還請求をして一部でも債務が残ると任意整理扱いとなります。そうなると、信用情報機関に事故情報として登録されることになり、ローンの与信審査にも影響するので注意が必要です。

過払い金返還請求権は正当な権利です

某法律事務所が、テレビやラジオのCMで「過払い金は簡単な手続きで返金できます」「5分ほどの電話で無料診断。今すぐお電話を」などと盛んに呼びかけているのを目や耳にしたことがある人は多いのではないでしょうか。

過払い金が発生した経緯とは

この法律事務所によると、依頼者は何万人にものぼるとのことですが、なぜこれほどまでに貸金業者などにお金を払い過ぎてしまう事態が起こったのでしょうか。その経緯について探っていきましょう。

過払い金って何?

普通、利息の上限は利息制限法で定められているため、貸金業者は上限を超える金利で貸付をすることができません。借金をして上限金利を超えた利息をつけて返済していた場合は、お金を払い過ぎていたことになります。この払い過ぎていたお金が「過払い金」と呼ばれるものです。

かつての出資法と利息制限法上の上限金利のズレが原因

もともと出資法や利息制限法に上限金利の規定はありましたが、出資法上の金利と利息制限法上の金利には大きく差がありました。そのダブルスタンダードが容認されていたことで、今日過払い金の問題が多く発生しています。平成18年、高いほうの利息をつけて弁済する「みなし弁済」は認めないとする最高裁判所の判決を受け、平成22年に改正貸金業法が施行しました。

現在の貸付時の金利は、利息制限法上の15〜20%(借り入れ金額により異なる)に統一されています。

過払い金返還請求をしても「ブラックリスト」にはならない

過払い金返還請求をしても、いわゆる「ブラックリスト」には載りません。過払い金はもともと払う必要のなかったお金で、過払い金返還請求は自分のお金を返してもらうための行為に過ぎないので、「事故情報」扱いにはならないのです。

過払い金返還請求権は法律上認められている権利

現行の利息制限法の上限金利を超過する利息については、民法上の「不当利得」であると解釈されています。そのため、過払い金返還請求を行うことは不当利得返還請求を行うことを意味します。過払い金返還請求は、法律で認められた正当な権利です。

過払い金返還請求が「ブラックリスト」になった時期もあった

かつては債務整理をしたときと同じように、過払い金返還請求をすると信用情報機関に「事故情報」として登録されることになり、いわゆる「ブラックリスト」状態になっていました。しかし、過払い金返還請求をしただけで5年間借り入れやクレジットカードの利用ができなくなるケースが次々に発生。金融庁が対策に乗り出します。

過払い金返還請求を事故情報とすることが禁止に

平成22年1月、金融庁が「過払い金返還請求について事故情報を登録すれば国の指定信用情報機関から除外する」と強気な態度で通達を出しました。これを受けて、借金完済後に過払い金返還請求をする場合と、返還請求をして残債が完済できる場合に限り、事故情報が信用情報機関に登録されないことになったのです。

過払い金請求は住宅ローンに影響するの?

過払い金返還請求をすると、過去に借金をしていたことが明るみに出てしまい住宅ローンなどの借り入れに何か影響が出るのではないか…と心配される方も多いと思います。しかし、返還請求をするタイミングによって住宅ローンへの影響の有無は異なるのが現状です。

住宅ローン申込み後に過払い金返還請求をする場合

住宅ローンの審査を通過して無事に借り入れができて、なおかつきちんと返済もできている状態なら、過払い金返還請求をしても特に問題にはならないと言えるでしょう。

ローン返済中の過払い金返還請求はほんとに悪影響?

ローンを借りて返済している最中に過払い金返還請求をすると、ローンを借りている金融機関から契約の見直しや一括返済を迫られたりするのでは…と心配になる方もいるかもしれません。しかし、与信審査を通過していて滞りなくローンの返済ができている状態であれば、過払い金返還請求をしてもマイナスの影響はないでしょう。

過払い金返還請求と住宅ローンは別問題

過払い金返還請求は債権者が不当に得たお金の返してもらうためのものなので、請求者に落ち度があるわけではありません。そのため、ローンを借りている会社にわざわざ過払い金返還請求をした事実などを告げる必要もないと言えます。

住宅ローン申込み前に過払い金返還請求する場合は要注意

過払い金返還請求は正当な行為と言えども、住宅ローンの申込みをする前に返還請求をするときは注意を要します。なぜなら、場合によっては過払い金返還請求が住宅ローンの与信審査に影響を及ぼすことがあるからです。

住宅ローン申し込み前に要チェック!過払い請求との関係

残債がなければ与信審査に影響はない

過払い金返還請求を行って残債がすべて帳消しになれば、信用情報機関に事故情報が登録されることはありません。そのため、残債が生じないようであれば、過払い金返還請求が住宅ローンの与信審査になんらかの影響を与えることは考えにくいと言えます。

残債があれば影響することもある

一方、過払い金返還請求をしてもなお残債があるようなら、手続き上は過払い金返還請求ではなく任意整理扱いとなります。そうなると、信用情報機関に5年間事故情報として残るため、住宅ローンの与信審査に通ることは難しくなるでしょう。住宅ローンを申し込む前に過払い金返還請求を行うときは、残債が発生しないかどうかをよく見極めることが大切です。

住宅ローンの審査には申込者の属性も重視される

ただ、住宅ローンの与信審査には信用情報機関の情報だけでなく、申込者本人の属性も重視されます。金融機関が申込者の勤務先・年収・勤続年数・家族構成・年齢などを総合的に見て問題がないと判断すれば、与信審査に通る可能性もゼロではありません。

過払い金返還請求を行うときに、他に注意すべきケースとは?

過払い金返還請求を行う際、住宅ローン以外にも注意すべき場合があります。それは以下の2つの場合です。

カードのショッピング枠と相殺する場合

たとえば、クレジットカードのキャッシングで20万円の過払い金がある場合、同じカードのショッピング枠で30万円利用しているとすると、10万円の債務が残ってしまいます。こうなると過払い金請求は任意整理扱いとなり、信用情報機関に事故情報が登録されてしまうのです。

グループ会社や保証業務を行っている会社と相殺する場合

たとえば旧DCキャッシュワンに20万円の過払い金があったとしても、アコムで50万円の借り入れをしているとすると30万円の残債が生じることになります。両者は異なる消費者金融業者ですが、同じグループ企業に属するため、このような現象が起きるのです。

過払い金の返還請求は、タイミングさえ間違わなければ住宅ローンの借り入れに特に影響を及ぼすものではありません。しかし、より確実に借り入れを行いたければ、過払い金返還請求は住宅ローンの申し込みをして審査に通った後にするべきでしょう。過払い金返還請求のタイミングについて迷うことがあれば、弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。

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