給与所得者等再生とは?個人再生の可処分所得の算出方法も解説

給与所得者等再生

給与所得者等再生とは、一般的な会社員などの将来的に安定した収入を見込める個人債務者のうち、無担保債権が5,000万円以下の場合に再生計画案を作成し、それを履行することで債務を免除してもらう手続きです。

給与所得者等再生では、負債総額に応じた最低弁済基準、財産をすべて処分したときの清算価値の他に「可処分所得の2年分」の要件をクリアしなければなりません。

可処分所得を算出するためには、法律で決められた方法に則って計算をする必要がありますが、計算方法は複雑で難しいので、当記事ではそれについて解説しつつ個人再生についても触れていきます。

給与所得者等再生とは?

給与所得者等再生とは、負債総額が5000万円を超えない範囲にあることに加え、給与またはそれに類する定期的な収入を得る見込みがあり、なおかつその額の変動が小さいと見込まれる人が対象となる制度です。

こちらは債権者決議が不要で、裁判所が債権者に意見を聞いて再生手続開始決定をするものとなっています。

なお、給与所得者等再生は、本来法人を対象とした「民事再生手続き」を、個人でも利用できるよう設けられた手続きです。平成13年の民事再生法の改正により個人再生制度が創設され、その中に「小規模個人再生」と「給与所得者等再生」の2つの方法があります。

要約すると、個人再生という大枠の中に、「給与所得者等再生」と「小規模個人再生」という2つの手続きがあるという感じです。

小規模個人再生とは?

小規模個人再生とは、負債総額が5000万円を超えない範囲にあり、かつ「将来にわたり継続的に反復する収入が得られる可能性がある」人が利用できる制度です。

手続きは民事再生よりも簡易かつ迅速に行われます。ただし、債権者決議を経る必要があるため、再生計画案はどの債権者にも納得できるものであることが必要となります。

債権者決議を経る必要がある

一般的な民事再生のような債権者集会が開かれるわけではありませんが、小規模個人再生の場合、書面で債権者決議が行われます。そのため、再生計画案はどの債権者にも納得できるものであることが必要です。

個人再生を利用するために満たすべき条件とは?

給与所得者等再生を含む上記の2つの制度を利用するためには、最低限クリアしなければならない基準があります。

まず、弁済期間を原則3年、最長でも5年に収める必要があります。次に、最低弁済額を満たすことが必要です。再生計画案の返済予定額が、負債総額に応じて決められている民事再生法上の最低弁済基準もしくは債務者の所有財産をすべて処分した場合の価値(清算価値)を超えなければ、裁判所の認可は下りないことになります。

また、詳しくは次項で解説しているのですが、給与所得者等再生の場合はさらに条件を満たさなくてはいけません。

ちなみに住宅ローンの返済の繰り延べや巌門の返済の一部猶予などに関する「住宅資金貸付債権に関する特則」も創設されており、住宅ローンの返済が滞ったって設定した抵当権の実行がなされそうになった場合、この特則の利用をすることで抵当権の実行手続きが中止されます。

なお、この特則は単独ではできず、小規模個人再生や給与所得者等再生の手続きとともに申請する必要があります。

給与所得者等再生の特有の条件

給与所得者等再生では、弁済額は最低弁済基準と清算価値のほか、「可処分所得の2年分」を超える必要があります。

これは給与所得者等再生に特有の条件です。給与所得者等再生を選ぶと、以上の3つの基準の中では「可処分所得の2年分」の額が一番大きくなることが多く、この額を3年かけて弁済することになります。

「可処分所得」とは?

可処分所得とは、債務者の収入から税金等を差し引き、さらにその金額から「債務者およびその扶養を受けるべき者の最低限度の生活を維持するのに必要な1年分の費用」を控除した額のことです。その費用は、各自治体の生活保護基準を基礎に、居住地域・世帯別・年齢別等によって算出されます。

給与所得者等再生は債権者の異議が出そうなときに利用される

サラリーマンであれば、給与所得者再生も小規模個人再生もどちらも利用できますが、弁済額の違いから、小規模個人再生を利用するケースが圧倒的に多いです。

ただ、小規模個人再生の場合は、債権者の半数以上又は再生債権額の過半数の反対があると再生計画が認可されません。よって、再生計画案が債権者の同意を得られないおそれがある場合は、給与所得者等再生を利用することになります。

可処分所得を具体的に計算してみよう

給与所得者等再生の制度を利用するときに欠かせないのが、可処分所得の計算です。債務者の居住地域や扶養家族の人数、職業、収入によって計算方法は若干異なります。詳しくは弁護士などの専門家に相談しながら可処分所得を算出するのがおすすめです。

可処分所得の算出方法とは?

可処分所得は、「可処分所得額算出シート記載要領」を参考に「可処分所得額算出シート」を利用して算出します。いずれの書類もインターネット検索でダウンロード可能です。では、可処分所得は具体的にどのように計算をして導き出せば良いのでしょうか?

可処分所得の計算の仕方

可処分所得要件を加味した給与所得者等再生の弁済総額は、以下の式で表すことができます。

弁済総額={(2年間の収入の合計-所得税・住民税等の税金と社会保険料)÷2-生活維持費}×2(2年分)

場合によっては、民事再生法上で定める規程に従わなければならないことがあります。正確な内容は、政府のウェブサイトや弁護士等の債務整理の専門家に確認しましょう。

可処分所得を証明するために必要な書類

源泉徴収票と課税証明書(住民税証明書)がそれぞれ2年分ずつ必要です。これらの書類から、所得税相当額、住民税相当額、社会保険料相当額を割り出して可処分所得の計算に使用します。

可処分所得算出シートの書き方とは

まずは住んでいるところが何区に当たるかを調べよう
最初に、氏名や年齢、住所、扶養家族名とその年齢など必要事項を記入します。このとき、自分の住所地が政令上第何区にあたるのかを調べて居住区分を記載しなければなりません。自分の属する区によって、生活費の基準となる金額が異なるためです。例えば、東京都23区は第1区、千葉県千葉市は第2区、埼玉県春日部市・川越市は第3区となります。

家は持ち家か賃貸か

現在住んでいる住居についても記載する箇所がありますが、具体的には住宅ローンを支払っているかどうかについて記入します。もし今住んでいる家が持ち家で住宅ローンを支払っているのであれば、1年間の支払い予定金額を記します。一方、賃貸住宅に住んでいて賃料を支払っている場合には、1年間の支払い予定賃料の金額を書くことが必要です。

以上の数字から実際の可処分所得を算出

1年間の給与の手取り額から、個人別生活費や世帯別生活費、冬季特別生活費、住居費勤労必要経費を合計した金額を差し引き、それによって算出された金額が1年間の可処分所得です。給与所得者等再生での条件は「可処分所得の2年分」なので、こちらの計算で出てきた数字を2倍したものが最低弁済額となります。

個人再生方法選びで可処分所得を算出したら弁護士に相談を

給与所得者等再生は、可処分所得の計算が面倒ではありますが、再生計画が債権者によって否決される危険を回避できる有効な個人再生手続きの一つです。

上記に示した計算方法で可処分所得を計算してみて、小規模再生と給与所得者等再生のどちらを選ぶか考えてみるとよいでしょう。また、その場合も弁護士などの専門家もまじえて十分に検討する必要があるでしょう。

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